ファゴットのご先祖様のひとつであるドゥルツィアン(Dulcian)(テナー)、と呼ばれるルネサンス時代の楽器が時折我が家にやってくる。
やってくると言ってもカテリーナ古楽合奏団の松本雅隆さんから
公演があるたびにお借りしているというだけのことなのですが。
(ここで松本雅隆さんとカテリーナ古楽合奏との出会いについて、少しお話ししておきたいと思います。)
とある公演でベーシストの田中馨くん(元SAKEROCKのベーシストで色々なバンドや演劇の音楽製作などで引っ張りだこの売れっ子ミュージシャン)とご一緒させてもらった時のこと。
あのね、うちの義理の父が古楽器奏者なんだけど、今度岡田くんをうちに連れてきてって言われてるんだけどちょっと来てよ。と言われて、行く行く!と二つ返事でトコトコ玉川上水まで出かけて行ったのでした。
珍しい楽器が所狭しと並べられたロバハウスとスタジオにお邪魔させていただき、リードが使えなくなってしまったダブルリード系の楽器、コルナミューゼ、ラケット、ショーム、などの楽器、それからもちろんこのドゥルツィアンも含めてリードの修復のご依頼をいただき、ファゴットのリードの材と器具で作れる範囲のも修復させてもらったのです。
上手くできたかはさておき、ダブルリードのご先祖様と少しお近づきになれたというわけです。
こちらのテナードゥルツィアンはA=440khでモダン(ファゴット)のリードがそのまま使えるのです。
その延長で、浜松の楽器博物館の資料映像を撮るというお仕事を頂き、そのタイミングでカテリーナ古楽合奏団のメンバーに是非加わってほしいとの嬉しいお誘いを受け、有り難くご一緒させていただくことになったのです。
とはいえ、ほぼ全部が初めて触る古楽器で1カ月半くらいの準備期間でコンサートに出させてもらうというのは、言葉のほとんど通じない国を旅しているようなスリリングでありながら、でもどこか知っているような懐かしいような不思議な感覚だったと記憶しています。(その時のぼくの担当楽器たちがロバハウスのホームページに載っていたので嬉しくなって掲載させてもらっちゃいました。)
左からコルナミューゼ、テナーリコーダー、クルムホルン、スパニッシュショーム、ゲムスホルン、バロックラケット、アンティークベル。
ドゥルツィアンも他のルネッサンス期の楽器と同じようにソプラノ、アルト、テナー、バス、とファミリーを形成しており、その中でもベデッガーのソナタ・ラ・モニカやベルトーリやべゾッツィのソナタなどの現在ファゴットのレパートリーとして認識されているものはこのファミリーの中のバスドゥルツィアンのレパートリーです。モーツァルトのファゴットコンチェルトも当時はこのバスドゥルツィアンで演奏されていたとも言われています。
こちらの楽曲が収められているCDはこちら。
なぜ、バスの楽器のみが後世もてはやされるようになったのか、またはレパートリーとして残ったのか、というところは大いなる謎というかロマンですね。
ファゴット奏者としてもこのバスのドゥルツィアンを是非とも手に入れたいところなのですが。
さてさて、このドゥルツィアンという楽器は現代のファゴットのように分割することはできません。
ですが、構造は同じです。吹き口から空気が入って一番下の部分で折り返してベルから出る、という仕組みです。こちらは親指側です。こちら側は全て低音のキィとトーンホール。
表がこちら左手
表右手
二股のキィはどうやら右手でも左手でも演奏できるようにこうなっていたそうです。
ベルは短い
音域は2オクターブ半、同じ時代の楽器のショームは音域が1オクターブ半なので音域の広さは歴然です。二つ折りにすることでテーパーを緩やかにして閉管振動率を上げて倍音を増やした結果音域が広がるという理屈ですが、当時の人々の音楽や楽器に対する情熱に脱帽です。閉管振動率が高いので音自体はこもった感じになります。それを残響1.2秒くらいの大聖堂で鳴らすとものすごく荘厳な響きになるのですね。ちなみにショームは開管振動率が高く野外などでよく響くというメリットがあり、音域の広さを犠牲にしても得たい魅力ある音色を持った楽器です、ぼくは両方とも大好きです。
こうして演奏しておりますと、、
それからこうして、、
なんだかファゴットとオーボエの境界線が自分の中でガラガラと音をたてて崩れてゆくのです。ぼくはモダンのオーボエを吹くことはできませんが、ルネサンス期の楽器でここまで同じなのならできる人がやったらファゴットとオーボエ持ち替えなんてことが、、できるわけないですよね(笑)でも本当にそんな勘違いをしそうになるほどご先祖さまの時点では構造が同じなのです。
じゃあなんでクラシックのソロのレパートリーの数がオーボエとファゴットではこんなにも差があるのか?という素朴な不満に対する一つの仮説として、あのJ.SB○ch先生がファゴット奏者と仲が悪かったために、故意に隅っこの方へ追いやったのではないのかと、そしてその後の作曲家も影響されたんじゃないのかと、僕は思うんですけど、どうでしょう?
元々ドゥルツィアンは教会でオルガンと同じように聖歌の伴奏をしていたという説もあるのですから、オルガン(オルガン奏者)と競合していたとも考えられます。そうです、あの先生もオルガン奏者ですぞ…むむむ!
それに加えてB○ch先生の曲の中でオーボエの曲は山ほどあるのにファゴットの曲は一つも無い、というのもおかしな話ではないでしょうか??これはきっと何かの陰謀に違いありません。
ベルトーリのソナタもこのピリオド楽器で聴くと妙に納得させられます。(陰謀論はさておき素晴らしいソロ楽器だと思いませんか?)
テナードゥルツィアンこちらの動画ちょっとぼくは軽く目玉飛び出ました。
それからそれから僕が参加させていただくようになるずっと前の作品ですが、カテリーナ古楽合奏団のCDを紹介させていただきます。ドゥクチア!
カテリーナ古楽合奏団につきまして詳しくはロバハウスHPにてどうぞ。
最後までお付き合いありがとうございました。
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