勝手に楽曲分析~JUDY AND MARY~クラシック~

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先日おかしな夢を見たのです。

その夢の中では、徳永英明さんと思しき男性ボーカリストがJUDY AND MARY(以下JAM)の

楽曲”クラシック”をカバーしているのでした。

”~今アツイ 今アツイ キセキが この胸に吹いたら このまま二人素直なままでいられたのに~”

とび起きて、まだ暗い明け方の中、余韻に浸りながらパソコンで検索すると、徳永さんが女性ボーカルのカヴァーをしているVOCALISTシリーズの中にこの曲はもちろんですが、ありませんでした。

まぁ夢だしな、と思って、とりあえずオリジナルを確認しておこうと聴き始めたのです。

なつかしーー!!

高校生くらいの時に聴いていた思い出がぶわぁってよみがえってきて

涙が止まらなくなってしまう。やばいやばい。

そこでふと気になってしまったのです。

歌詞の一節、題名にもなっている

クラシックなBlueってなんだ?

2年くらい前にチューハイのテレビCMで俳優の高橋一生さんがJAMの

Over Driveを口ずさんでいるのを見た時にあっジュディマリ!って

思い出した、それ以来だったと思います。

あのサビは確か

“走る 雲の 影を 飛び越えるわ 夏のにおい追いかけて あぁ 夢は いつまでも覚めない

 歌う風のように”

だったなぁ、と。

改めて思うのですが、

なんてきれいな文章なんだろう。

何度でも頭の中でリフレインできる。

これは完全に文学です。

さて、話しを”クラシックなBlue”に戻しましょう。

題名にもなっている”クラシック”についてはインタビューで作詞でヴォーカルのYUKIさんが、この曲にはモノクロの写真のようなイメージがあって、それを言葉で表すと”クラシック”だった。

という様な事を仰っていたそうです。

YUKIさんは音や言葉をヴィジュアル化したイメージに変換することに長けたアーティストなのだと思うのです。

それからBlueという単語。

ジャズが好きな人はBlueという単語を聞くと

「ん、呼んだ?」ってなるはずです。

ならんって?

まぁそういうこともある(笑)

それはそうと、ブルーノートだったり、ブルー・イン・グリーン

ラプソディ・イン・ブルー、ピット・イン(違った!)ブルー・モンク

なんて曲もあったなぁ。

Blueという単語を聞くと、どうしてもジャズ的なものをイメージしてしまうんですね。

それから

”ブルーになっちゃった”といった表現とはちょっと違う、Blueという情感がある、

ということを、とあるジャズの評論で読んだ事があります。

完全なる痛み悲しみだけでなく、少し諦めにも似たような切なさと美しさ、または強さ、が含まれているのだと。

マイナーとメジャーが織り混ざったとも言えます。

それが、この楽曲にも見事に当てはまっている、と思うのです。

ちょっとしたきっかけで調べ始めたら止まらなくなってしまい、

気づいたら記事になってしまいました(笑)

そんなこんなで前置きが長くなりましたが、”クラシックなBlue”というキーワードを軸に

歌詞(言葉、テクスト)、コードとスケール、リズムという三つの視点から

”クラシック”の世界をじっくり味わってゆこうと思います。

まず始めに、

拍子は4分の4拍子、KeyはF♯Majorで

冒頭から。

“Baby 今は泣かないで いつものように聞かせて”

ここまでで4小節

”泣かないで”までメジャースケールで登って帰りの下降形の行き着いた先の音がDナチュラル、早速きました。ブルーノートというものとは厳密には違いますが、Blueな感じが出ています。と言うのも、

4小節目のコードがA♯7となっていますので、F♯Keyのパラレル(平行短調)のⅤ7(ドミナントセブンス)、スケールはA♯をルートとしたHmp5↓(ハーモニックマイナーパーフェクト5ビロウ)スケールですね。(ルートの完全5度下から始めるとハーモニックマイナースケール、和声的短音階になるよスケール)

ちょっとかげりはあるものの完全なるマイナースケールではないわけです。(コードがセブンスですのでコードスケールはマイナーにはなり得ません)

そして解決した次のコードはD♯m7、マイナーですね、マイナースケールです。

でも歌詞が、”あの頃見つけた 真っ白な想いとざわめきを”

きれいな思い出というか、ちょっと切ないけれど決して暗くはないですよね。Blueな感じが出ているなぁと感じるポイントです。

そこから3小節目のBのコードをピボットにしてF♯KeyのⅤ、C♯のコードを通って2フレーズ目の頭、F♯に戻ります。

次の8小節、

”BaBy今は抱きしめて震えちゃうから

昨日よりShyなこの想いを壊さないように”

構成としてはA -Aですが、独白とも二人の会話とも取れますね。

そしてよく聴くと音の構成も微妙に違っています。

前半の”聞かせての”か”先ほどお話ししたDナチュラル。

2フレーズ目ではそこに当たる箇所、”震えちゃうから”の”ら”に当たるところがD#になっています。C#のミクソリディアンでそのまま降りています。

素直ですね。(ミクソリディアンはメジャー系のスケールです。)

それから”昨日よりShyな”のところ、Shyに当たる音がAナチュラル。全体のスケールをF#メジャーと考えた時のマイナー3rd 正真正銘のブルーノート来ました!

しかもこのShyという少し影のある単語とブルーノートを合わせてくるところがにくい!

イントロからのA -Aでぐっとこの世界に引き込まれるわけです。

そして次の8小節、一回目のB。

美しい心象風景が立ち現れます。

”雨はすっかり上がってあの道を

乾かしてく光だけが静かに揺れる”

このパートはA#をルートにしたオルタードスケールというジャズでもよく使われる、ブルーノートを多く含むスケールが使われているのですが、ここでぼくが言いたいのは

この心象風景を一枚の画として見せるリズムの使い方です。

聴くと、一筋の光が、画面の奥に向かってすうっと伸びていく感じがありますよね。

拍子、Beatというものはどうしたって1が強く聞こえるという特徴があります。それはテクストのシラブルでも同じです。

そこをうまくずらしたり合わせたりすることで立体感を生み出しているのではないでしょうか。

頭の”雨は”のところ、3拍目の裏から入ります。

”すっかり”の”す”のところで1拍目とぴったり合っていますが前半ではそれ以外は全てずらしてあります。

なので”すっかり”がいちばん強調された上で”雨はすっかり上がってあの道を”というフレーズが途切れることなく浮かび上がってくるのです。

そして次の”乾かしてく”~のフレーズ、こちらはテクストのシラブルと1拍目が全て揃っています。一つひとつの単語が強調されることになります。

そしてなおかつG#A#F#と構成音も全て同じです。コード進行もG#マイナーからのC#でⅡ-Ⅴです。至ってシンプル。

なのにフレーズが前へ前へと進んでいるように聞こえるのはなぜでしょう。

答えはそれぞれの小節の中にありました。

曲のBeatが4拍子に対してテクストの音節が6、約分すると2対3になりますね。

音楽用語で言うところの2拍3連です。

それぞれのテクストの音節が微妙にズレながら次の小節の1拍目を目指すので前に前に行く独特の気持ちよさが生まれるのです。

この二つが見事に合体して一枚の画が完成しているのですね。

この曲の中にはこのシラブルと拍子の強調の魔法(勝手に名付けた)と2拍3連の魔法が至るところに散りばめられているのです。

それでは2回目のA

”何度も重ねたkissはガラスみたいにもろくって

眠れない恋は行き場をなくして漂う宇宙”

シラブルの頭と1拍目が合う強調ワードはガラス、恋、宇宙、

何だか色が見えてくるような感じがしてきませんか?

それにしてもこの恋はどこへ向かうんでしょうか。

1回目がA -Aだったのに対してAが一回

ううん…深読みしすぎかな‥

次、

”真綿のようなふたりは夕焼けに

影をつくる細くなる小さく泣いてる”

前半、強拍ずらし、後半2拍3連

テクストとリズムで見事な遠近感を出しています。

すーっと画面が引きになっていくような印象を受けます。

メランコリックな回想シーンのような心象風景ですね。

そこから、1拍目休み、2拍目から”今”にぐいっと引き戻されます。

過去と現在の立体感とでも言えば良いんでしょうか。

”今アツイキセキがこの胸に吹いたら

時の流れも水の流れも止まるから”

強拍の強調ワード、キセキ、流れ、止まる

すうーっと引いた後に、この”キセキ”というワードが目の前にばーんと現れるんです。

それも”今””アツイ”。

細かいですがこの”キセキ”も2拍3連ですね!

そして、ポジティブなはずの内容のテクストにD#ルートのHmp5↓というかげりのあるスケールが使われているのでさらにグッときちゃうんですねぇ。

加えて中心となっているコード進行がF#-D#7-G#m7-C#でⅠーⅥーⅡーⅤという無限ループできる進行になっています。ですので、頭の中でもぐるぐる回るのです。

最高の強調です。

そして畳み掛けるように、

”愛しい人 震える想いをのせて

いつまでも 夢の中にいて”

愛しい人って誰?誰?誰?

もしかして俺?

という錯覚に陥るのです。

(ならないか、、)

ここもよく聴くと2拍3連が使われています。

”いつまでも”の”までも”夢の中にいて”の”ゆめのなかに”が2拍3連です。

強拍の強調ワードは ”いつまでも ”夢の中に” ”いて”

最後のフレーズ全部ということですね。

2拍3連と強調ワードの両方を使って

遠近法的にグッと迫ってきますので勘違いしても仕方がありませんね。(笑)

ちなみにここではA#をルートとするオルタードスケール

(ブルーノートまみれ…だんだん雑になってきた)が使われています。

ちょっと切ない感じが見事に表現されています。

そしてTAKUYAさんのかっこいいギターソロがあって…

ここにもやはり2拍3連が…

冒頭から8小節ずつのセクションでカウントするとA -A -B -A -B -C

Cは”今アツイ”で始まるセクションで16小節。

ギターソロが終わってからのインターバルのようなセクションを仮にDセクションとします。(16小節)

があって、D -C -C(コーダ)-アウトロとなります。

Dセクション、

”約束をしよう

きっと ずっと 忘れないように

Baby”

”クラシックなBlue なみだが あふれちゃう”

さてさて、ついに登場いたしました。

”クラシックなBlue”

ここでも強拍の強調という考え方を使うと、強調ワードは

”きっと” ”ずっと” ”クラシックな” ”Blue”となります。

何だか暗号みたいですね!

ここも抽象度を上げた心象風景として捉えることができるのではないでしょうか。

コード進行もⅡ-Ⅴ-ⅠとⅢ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴが使われていますので、ぐるぐると頭の中でループします。リフレインと言っても良いかも知れません。

最後のC 

1拍目休みで”今アツイ”もう一度”今アツイキセキがこの胸に吹いたら

このまま二人素直なままでいられたのに”

お気づきとは思いますが最初の”今アツイ”と2回目の”今アツイ”は構成音が1度上がります。テクストがリフレインする時は音の方でグッと熱量を上げる、というテクニックですね!コードはC#で変わりません。ドミナントセブンスの中で転回しているだけです。

前半の”乾かしてく光だけが”のところとは逆ですね。

それから歌詞ですが

”今アツイ~素直なままでいられたのに”ですので

時間軸が今度は”今”から過去にぎゅううんと引きもどされるのです。

素直なままではいられなかったのね。。

”愛しい人 震える 想いは今も 生きてるわ

この街の どこかで 強く風が吹いたら

切ない日々も キレイな空の 色に変わる”

次の”愛しい人”、このワードは作中で3回出てきます。その中でもここの”愛しい人”だけ他と構成音が違います。

他2回が、前のフレーズの終わったD#の音から始まっているのに対してここだけはルートのF#から歌い直しています。(いずれもコードはF#です。)

そしてその後に”震える想いは 今も 生きてるわ”と歌っています。

ルートから歌い直すこととあわせて現在に再び気持ちをぐっと持ってきているのではないでしょうか。

そして続く”この街のどこかで”というワードが現実味を強調している(”この胸のどこかに”と言われるより、”この街のどこかに”と言われたほうがよりリアルな)ようにも思えます。

それと同時に、このワードはピボットのような役割を果たしていてコーダに継ぎ目なく流れこむ役割も果たしています。

”生きてるわ この街のどこかで”と”この街のどこかで 強く風が吹いたら”という2つのフレーズをうまく繋げていますね!

”強く風が吹いたら”  ”切ない日々もキレイな空の色に変わる”のです。

”愛しい人”が 過去、現在、未来と時制を超えて抽象的な”想い”へと昇華してゆくかのような印象を受けます。

”愛しい人 震える 想いをのせて いつまでも 夢の中にいて”

抽象度をぐんと上げて聴いてみると”愛しい人”というものが”音楽そのもの

”歌そのもの”でもあるのではないかという気さえしてきます。

”愛しい人”はきっと今でも夢の中にいるんですね。

最後にYukiさんの歌うこちらの楽曲を紹介したいと思います。

この”クラシック”という作品と深いところで繋がっているのではないでしょうか。

聞き覚えのあるワードもちらほらと出てきますよ。

JAM時代よりもっと声の深みとオトナの色気が増していて最高です!

最後までお付き合いありがとうございました。

なお、そこって違うんじゃないの?と言ったご意見などなどありましたらコメント欄にてお願いいたします。

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